野菜の生姜を知らない人はいないと思いますが、出西生姜という名の生姜をご存知ですか?
出西は島根県出雲市斐川町の出西という地区の土地名で、「しゅっさい」と読みます。
出西生姜はこの地区特産となる生姜のことで、幻の生姜と呼ばれているのです。
今回は、出西生姜についてご紹介させていただきます。
目次
出西生姜は幻の生姜!?
スーパーマーケットや八百屋さんで売られている普通の生姜と出西生姜が違っているのは、この生姜はこの出西地区でしか収穫できないということです。
それは単にここで栽培が盛んで生産量が多いということではなく、本当に出西地区でしか育たない生姜なのです。
この生姜をほかの土地に植えても、育った生姜は違ったものになってしまうと言われ、逆に出西生姜ではない生姜を出西で育てると、出西生姜の特徴を持ち始めるとも伝わります。
出西は出雲平野を流れ下る斐伊川(ひいがわ)沿いに位置する地区で、昔から斐伊川の伏流水が豊かな上、その川のおかげで土壌が鉄分、ミネラルなどを多く含む滋味豊な土地です。
また「斐伊川おろし」と称される風が吹く寒暖差の激しいのが特徴の土地柄で、出西生姜はそんな斐伊川下流域の2kmほどの区域でしか育てることができない、正に幻の生姜なのです。
究極の伝統野菜
712年に書かれた日本最初の歴史書である古事記の中で、出雲神話の八岐大蛇(やまたのおろち)や素戔嗚尊(すさのおのみこと)にまつわる川として、
斐伊川が登場しています。
また西暦733年に編纂された「出雲国風土記」に、「出雲大河、百姓(たみ)のうるほい(潤い)の薗(その)なり」という一節があります。
出雲風土記とは国から指示で編纂されたもので、この出雲大河とは斐伊川のことを指しています。
「泣くよ鶯、平安京」と憶えたように、平安時代の始まりが794年ですから、それ以前の遠い昔から、この斐伊川流域の土地は農耕に適した肥沃な場所だっとことがわかります。
そしてある時、ご神体が遥か九州から海を流れて漂着し、それを祀ってお宮さんを建てたところ、そのお宮さんの周りに生姜がたくさん茂り始めたという言い伝えが残っています。
その生姜が出西生姜で、だからこの土地でしか育たないこの生姜は究極の伝統野菜なのです。
生姜の匂いで風邪ひかぬ
生姜は漢方薬の原料の一つで、紀元前から栽培されていた中国から渡来したと伝わっており、平安時代の国の法令集である延喜式にも、その栽培法や保存法が書かれています。
また江戸初期の「本朝食鑑」という本には、シソの葉との塩漬・噌漬け・粕漬け・蜜漬けを薬として服用すると記されていています。
出西生姜は約400年前から栽培が始まったと伝わりますが、地元では「娘やるなら出西郷へ。生姜の匂いで風邪ひかぬ」と唄が残っているほどその薬効は秀でていて、近在の大名への献上品として珍重されたほどでした。
生姜は食欲増進・殺菌・解熱の効果があり、体温を高めて冷え性に効くことは現代では常識にもなっていますが、昔の人はそれを経験則で知っていたのですね。
旬の時期は?
出西生姜の旬の時期は8月~10月です。
出荷は12月初旬頃までだそうです。
出西生姜は限られた土地でしか育てることができないため生産量は少なく、市場に出回ることは中々ありません。
生産量は毎年徐々に増やしているそうですが、テレビなどのメディアで紹介されたこともあり、生産量が追い付いついていない状況のようです。
出西生姜の味や使い方は?
出西生姜は繊維が少なくて柔らかな上、風味や香りがはっきりした、それでいて爽やかなキリっとした辛味が持ち味です。
そんな出西生姜を使ったレシピは、料理からスイーツにわたり数多くあります。
例えば、斐川町にある道の駅「湯の川」のレストランでは、生姜カレーや豚生姜焼きが人気です。
地元のお店が製造販売している「出西しょうが湯」や「出西しょうがの砂糖漬け」は、出西生姜の持ち味である辛みと砂糖・黒糖の甘さが見事に調和した逸品で、「出西しょうが」を冠する商品名にその美味しさが表れています。
また板状の生姜糖は、出西生姜を使った300年の昔から続く伝統菓子です。
そして茶道が盛んな地ならではの、これは150年前から親しまれて来た抹茶仕立ての生姜糖も外せません。
もっと気軽なところでは、ラッキョウ酢でまるごと煮込んだ、日本酒の肴に欠かせない自家製甘酢漬けや、おろし生姜に炭酸水とシロップを入れたジンジャーエールなどで、生産農家では手軽に出西生姜を楽しんでいます。
料理では「生姜ご飯」がお勧め。
出雲市立斐川学校給食センターのメニューになっている地元密着の生姜の炊き込みご飯で、炊きあがった後にさらに生姜のみじん切りを加えると、歯応えが良くなって一味上るそうです。
他にも、
・出西生姜を使った、出西しょうがしょうゆ
・粉末にした、出西しょうがパウダー
・チップを乾燥させた、乾燥出西生姜
といった商品もあります。
出西生姜の販売は?通販で買える?
収穫は8月から12月頃までなので、その時期は地元のスーパーマーケットや道の駅で販売されています。
通販では出西生姜そのものは、Rakutenなど期間限定で扱っている程度です。
出西しょうがパウダーや乾燥出西生姜は通年購入できるようです。
在庫状況は変動しますので、下記のバナーからそれぞれの検索結果をチェックしてみてください。
出西しょうがパウダーを使ってみた!
というわけで、島根県の道の駅にて出西しょうがパウダーを発見!
幻の生姜を実際に味わってみるべく購入してみました。
お値段は、確か600円くらいでした。
賞味期限は、購入日からおよそ1年ほどでした。
今回は、お味噌汁に入れて味わってみます。
ピリッと鋭い感じで、上品な風味と強めの辛さが特徴的です。
少しの量を入れただけでも、結構な存在感です。
生姜好きな方には是非とも1度食べてみてほしいですね。
また、出西生姜入り味噌汁を飲んだ後は体がポカポカするのも感じられましたよ!
お手軽にできる、寒い季節の風邪予防にもいいですよね。
最後に
出西生姜は元々は昔から栽培されてきた、出西の人たちにとっては珍しくもない当たり前の作物でした。
ですから時期になると育てる他の野菜の一つに過ぎませんでした。
一時期は大量に安く出回った普通の生姜に押されて生産も激減してしまったそうです。
そこで斐川町の斡旋もあって、町おこしとしてブランド化するために平成10年に出西生姜組合が創設されました。
メディアで取り上げられる事もあり、その名は年々全国に広まっているようです。
市場に出回る量が少ないですが、手に入れられる機会があったら、幻の生姜をぜひ一度ご賞味くださいませ。