「外郎」と書いて何と読むでしょうか?
和菓子ファンなら読めるはずですし、また名古屋と山口の人も分かるでしょう。
正解は「ういろう」です。
外郎といえば、名古屋の地名が開口一番が飛び出すほど有名ですが、山口の外郎も知る人ぞ知る山口の代表的郷土和菓子です。
いろいろなお店がそれぞれに美味しい外郎を扱っていますが、そんな山口外郎の一つに、山口県民なら誰でも知っているという「豆子郎(とうしろう)」をご紹介します。
目次
豆子郎とは?
名古屋を始めとした国内各地に有名な外郎はあります。
それらの外郎と山口外郎の違いには、通常の外郎は米粉から作られるのに対して、山口外郎は主にワラビ粉を原料にしている点があります。
したがって、弾力が強くもちもちプルプルしているのが特徴です。
豆子郎は、そこに更に豆を加えているのが特徴です。
誕生秘話
豆子郎を扱っているのは、株式会社豆子郎という和菓子の製造販売会社です。
創業は昭和23年で、会社設立は昭和3年という、老舗が多い和菓子業界では比較的若い会社です。
創業者・田原美介氏は元々は満州鉄道の技術者でした。
終戦後、帰郷したものの仕事がなく、今でいうグルメだった田原氏は、食糧難の当時でも入手可能だった米ぬかを実家から分けて貰い、配給品の小麦粉・砂糖を入れて「ぬかパン」なる商品を作って売り始めました。
やがてグルメの田原氏は、故郷名産の山口外郎を使ってもっと美味しい食べ物ができないかと、技術者らしい探求心で懸命に新たな美味しさを追い求めます。
そんな田原氏の姿勢に心打たれた山口外郎の老舗店主が、外郎造りの秘伝を伝授。
田原氏は本格的に新たな外郎造りに着手します。
技術者出身の田原氏は、当然教えられた外郎造りそのままの外郎を販売することをよしとしませんでした。
今までにないものを作りたいという技術者らしい向上心から、従来の外郎とは違うものを求めたこともありますが、技術者こその生真面目さの表れで、秘伝を伝えてくれた老舗店の外郎と競合することを避けようとしていました。
あらゆる原料で試作しては試食、という努力を限りなく繰り返した結果、独自の食感と溶けるような口当たりを兼ね備えた外郎生地ができあがります。
その生地に豆を加え蒸しあげた時、生地と豆が見事に調和した全く新しい外郎、豆子郎が誕生しました。
商品名・豆子郎に込められた思い
素人(しろうと)のことを、話し言葉で「とうしろう」と言います。これが豆子郎の商品名の由来です。
元は鉄道技術者だった田原氏は、当然菓子造りのプロではありません。
そんな素人でも苦労を厭わす、真面目な努力をコツコツと続ければ、本当に美味しいお菓子を創ることができる。
だから素人の心を忘れずに、常に奢ることなく、たゆまない努力を続けることが肝要だという自戒が込められています。
美味しい菓子造りのために、奢ることなく努力を続けることをその名で体現した豆子郎は、常に進化しています。
例えば今では当たり前の、日持ちするための密封包装です。
豆子郎は発売当初は、その日に販売するものはその日に製造されていました。
人気が出て販売量が増えると、遠方からの要望や手土産のための日持ちが望まれるようになりました。
密封包装はこの日持ちを実現する一つの方法でしたが、当時の技術と資材ではなかなか困難でした。
この密封包装に田原氏は技術者としての持ち前のチャレンジ精神で挑みました。
加熱殺菌用フィルムの研究から始めて、苦労の末これを完成させました。
生絹(すずし)豆子郎
密封包装の豆子郎の美味しさが長持ちするとはいえ、やはり豆子郎の原点は造りたての美味しさです。
それを再現すべく創り出されたのが生絹豆子郎です。
生絹とは練絹になる前の絹糸のことで、柔らかな肌触りが特徴の練絹とは一味違う、コシの強さ透け感が持ち味です。
古来の十二単などはこの生絹で織られており、原点回帰の新たな豆子郎に相応しい名です。
従来の豆子郎とは趣の違った、みずみずしい味わいを楽しめます。
その日に造ったものをその日のうちに提供するという、誕生当時の豆子郎を賞味してもらうためにできた生絹豆子郎は、だから工場から1時間以内で届けられる店舗でしか販売していない、創業者の精神を受け継ぐ真面目な商品です。
カロリーは?
カロリーは?
1本26g当たり、約57kcal
賞味期限は?
賞味期限は?
3日(密封タイプは1週間ほど)
食べてみた感想
というわけで、山口宇部空港にて生絹豆子郎を発見!
実際に味わってみるべく購入してみました。
左から、蓬(よもぎ)、小豆、抹茶、です。
蓬は、春の季節限定商品のようです。
山口の外郎は、材料にわらび粉と小麦粉を合わせていて、豆子郎はそこに豆を加えているのが特徴です。
一口頬張ると優しい甘さが口の中に広がり、絹のように滑らかで、すごく上品な舌触りが特徴的です。
やはり、わらび粉を使用しているので、わらび餅のようなプルプルもちもちした食感ですね。
甘さは控えめなので、飽きずに食べ進められます。
私は、特に蓬が風味が良くってお気に入りになりました!
外郎好きな方は、ぜひ一度お試しください!


販売店やお取り寄せは?
豆子郎は、山口県内の直営店、新山口駅、山口宇部空港などで販売されています。
また、株式会社豆子郎のホームページからお取り寄せも出来るようです。
まとめ
会社のホームページにある商品紹介では、豆子郎は外郎となっていません。
その誕生物語にも、故郷名産の山口外郎をもとに、それとは一線を画したお菓子と紹介されています。
そもそもワラビ粉を主原料とする山口外郎自体が、うるち米の米粉を主な原料としている名古屋など他の外郎とはまた違った食感だといわれ、豆子郎がそんな山口外郎の中でもさらに一段と趣が違っていると評されています。
そんな様々な外郎の食べ比べはきっと楽しいに違いありません。
そして豆子郎を楽しむには密封包装の豆子郎は通販でもできますが、やはりお勧めとしては、本場山口で生絹豆子郎を味わいたいものです。