全国的にはあまり知られていませんが、一文字のぐるぐるは熊本を代表する郷土料理です。
一文字と呼ばれる分葱の一種をぐるぐる巻いて、甘酸っぱい酢味噌で頂く、「饅・(ぬた)」に似た料理です。
ぐるぐるという名前の響きが、とても愛らしくユニークなお料理。
今回は、一文字のぐるぐるを食べてきた感想と、特徴や由来などついてご紹介させていただきます。
品名 | 一文字のぐるぐる |
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都道府県 | 熊本県 |
ジャンル | 郷土料理 |
カロリー | 1つ約50kcal ※目安 |
食べた場所 | 熊本市内の居酒屋 |
目次
食べた感想
というわけで、熊本市内の居酒屋にて、一文字のぐるぐるを発見!
実際に味わってみました。
一口食べると、一文字の甘みや香りと、酢味噌の甘酸っぱいお味が口いっぱいに広がります。
ザクっとした、しっかりした歯ごたえもすごくいいですね。
味や食感はもちろん、見た目から楽しめ良い郷土料理でした。


一文字ってどんな野菜?
ぐるぐるで使用される一文字は、熊本名産の分葱(わけぎ)の一種です。
一般的な分葱と比べると、茎の根元が膨らんでいる事が大きな特徴です。
熊本で栽培されている上品な香りが魅力の野菜なのです。
一文字の美味しい季節は春(3月の中頃)・秋(11月中頃)の年2回。
丈は約30cm~40cm程に育ち濃い緑色で沢山の株に分岐します。
一文字のぐるぐるの歴史
一文字のぐるぐるの発祥は今から236年前1782年(天明2年)に遡ります。
時の肥後細川藩6代目藩主・細川重賢(ほそかわしげかた)が、困窮していた藩の財政を立て直そうと藩財政の改正に着手しました。
重賢は民や家臣に節倹耐乏(せっけんたいぼう)を呼びかけ質素倹約を奨励しました。
平民は男女ともに木綿の着物を着用する事が義務付けされました。
その頃、「酒に肴など出すとは贅沢だ」と、特に酒の肴について批判が上がっていた為、何とか身近で安価な食材で美味しい肴になるものは無いかと考案されたのが、畑で栽培され身近な一文字を使用した「一文字のぐるぐる」だったと伝えられています。
名前の由来
一文字は分葱の一種ですが、何故一文字と呼ばれているかというと、宮中や院に仕えていた女房(にょうぼう)達が使った言葉から来ているとされています。
女房言葉が使われるようになったのは室町初期頃からと言われています。
例えば おから・おかず等言葉の頭に「お」とつける丁寧語。
しゃもじ・ひもじい等語尾に「もじ」と付ける「文字言葉」が代表的な言葉遣いです。
昔はねぎの事を葱(き)と1語で呼んでいたことから、葱=一文字(ひともじ)となったと言われています。
そう考えると、身近な野菜である分葱も、雅やかな雰囲気を醸し出す高貴なお野菜に見えてきますね。
京の都から随分と離れている肥後の国で、この様な女房言葉が根付いているのも不思議で興味深いですね。
一文字のぐるぐるはどこで食べられる?
熊本県内の郷土料理を出す飲食店・居酒屋でも、突き出しや酒の肴として提供されています。
一文字ぐるぐるをおつまみに、熊本の美味しい焼酎を飲んで地元の文化に触れてみるのも楽しいですね。
一文字のぐるぐるはどうやって作るの?
①ヒゲ根を取り除いた一文字の葉先に包丁を使い切れ込みを入れる等小さな穴を開けておきます。
(湯がいた時に破裂しないように)
②芯の硬さが有る程度残るように根元から(30秒程)鍋に入れトータルで1分半~2分程湯がいて冷水に放ちます。
一文字が粗熱が取れたらしっかりと水気を絞ります。
*一文字のぬめりが気になる方は葉先を少し切って包丁の背で中のぬめりをしごいて下さい。
③一文字を1本ずつに分け根元から5cmで折りまげます。
もう1回5cmで折り返したら余った葉でぐるぐると折り曲げた束を巻きます。
巻き終わりは束の脇に差し込みます。
④一文字のぐるぐるを器に盛りお好みの酢味噌を上からかけて出来上がりです。
最後に
熊本の郷土料理である一文字のぐるぐる。
可愛らしいネーミングが一度聴いたら忘れられないユニークな料理ですね。
一文字のぐるぐるは肥後藩を財政危機から脱出させた、名君と呼ばれているお殿様が呼びかけた質素倹約令に、人々が一生懸命応えた証の様なひと品です。
分葱のぬたと同じような材料と味付けなのに一文字をぐるぐると巻くことで、上品な見た目と歯ごたえも楽しめる美味しい肴に昇華しています。
素朴なのにどこか高貴なのは女房言葉からの由来のせいでしょうか?
今回、この料理を頂いてきましたが、シンプルな素材なのに手間がかかっていて、料理を作った方の心がこもった味がしましたよ。